#93 ビジョンクエスト

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最近あるアメリカ人ご夫婦と

夕食をする機会がありました。

御主人はハワイ大学の教授で

海の環境保全を研究している方です。

 

奥様の方は仏教に入信し

毎日の仕事や人間関係の中で

信仰の生活を

実行しているという女性でした。

 

その夜の話題は

自分が実際に経験した

人生の大切な体験

という話題でした。

外国に生活して

多くの人に助けてもらった経験から

私は、少しでも他の人を助ける事が

出来ればと思い

ライフコーチをしていますと

話しました。

 

オレゴン州生まれで、

今まで日本と

何の関係もなかった奥様は、

仏教の教えを通じて日本文化と

精神的なつながりを感じ、

それを一生の学びのテーマにしていると

話されました。

 

御主人のマークさんは、

ちょっとユニークなご自分の体験を

話してくれました。

ぶれる事なく自分の仕事を

続けてこれた根底になる体験は、

ビジョンクエストという

体験であるという事でした。

 

 

かれこれ20年前の事です。

 

まだ若手研究者だったマークさんは

自分の人生の目的は

何だろうという哲学的な問題に

心を悩ませていました。

 

海が好きだったマークさんが

選んだ海洋科学という専門分野でしたが、

学位を取った後、

政府レベルの環境問題の理解不足、

職場の足の引っ張り合い、

思ったよりうまく進まない研究テーマ、

更に高齢化する両親、

などなど、

何かしっくりこない、

何故か自分がわからない

そんな気持ちを持って

もんもんとしていた

毎日だったそうです。

 

そんな時、マークさんは

一か月ほどの夏季休暇を利用して

ワシントン州の山中で

アメリカネイティブに伝わるという

ビジョンクエストという

体験に参加する事にしました。

 

マークさんは、

実はその時、

ビジョンクエストが

一体何たるかを

正確に理解していたとは

言えませんでした。

 

ただ、ビジョンクエストを

体験をした同僚がいて、

参加後、

まるで人が変わったようになって

職場に戻って来たのを

覚えていました。

精神性の問題の

突破口を探していた

マークさんが

藁にもすがる気持ちで

飛びついたわけです。

 

ネイティブアメリカンの

多くの部族には

ビジョンクエストという

通過儀式(儀礼)が

伝わっています。

 

若者が大人になる前に

通らねばならない道で、

通過儀礼は

ネイティブアメリカンに限らず、

世界のあちこちの文化に

ある風習です。

 

日本でも昔、元服式がありましたし、

現代の成人式は

通過儀礼の一種と言えると思います。

 

ネイティブアメリカの

部族によっては、

荒野に飲まず食わずで

若者を一人置き去りにしたり、

奥深い山奥に連れて行って

ぎりぎりのサバイバル体験をする

過酷なものもあるようです。

 

それは幼児期を過ぎた子供が

一旦疑似的な死を迎え、

人生の目的を再確認して再生する

という意味を持つ

大切な儀式なのだそうです。

 

今まで、

自分の為だけに生きてきた若者が、

部族やグループなど

自分以上の目的を探す旅であり、

ビジョンクエストを
象徴的に「英雄の旅」と

呼ぶ学者もいます。

 

マークさんはその頃

40代の初めの中年で、

少年たちの為のビジョンクエストが

自分にどんな変化を持たらすのかは

未知数でした。

 

しかし、少し調べていくうちに

あるダコタ族の長老の

こんな体験談に巡り合いました。

 

 

「その日が来る何か月も前から

私は祈りを捧げました。

自分の心と体が過酷な旅に

耐えられる事を祈ったのです。

部族の長老たちやメディスンマンが

指導をしてくれました。

 

その日が来るとスエットロッジと

呼ばれる小屋に導かれました。

熱い石が焼かれ、

私は小屋の中で西側に座り、

東側に座った長老から

聖なるパイプを受け取りました。

 

東西南北にパイプを捧げ、

そこで鷲の羽根と

フランネルの布とを受け取り、

これからの精神の「旅」について

更に祈りを捧げました。

 

スエットロッジでは

水だけの断食が始まりました。

最後は水を飲むことも

許されませんでした。

 

その後長老が私を導き、

深い山の奥まで

1日半歩き続けました。

 

持って行ったものは

鷲の羽根と布と

聖なるパイプだけで、

話したり質問をする事は

許されませんでした。

 

長老が選んだ山の中の高台は

岩場で、樹木の向こうに

荒野が見渡せる場所でした。

 

私は長老の指示に従って、

そこに布を敷き、

四方向の地面に小さな

旗を立てました。

 

そして3日間

東西南北と天と地の

6方向に祈りを捧げました。

私はその場に座り続けました。

勿論飲まず食わずでした。」

 

ダコタ族の長老は

そこでスピリットからの

メッセージを待ったのです。

 

肉体的に極度の状態にある少年は、

象徴的な死を体験し、

「スピリットの声」、

「精霊の声」を聴いて

再生への道を歩む事が

出来るとされています。

 

身体の極限にあった

夢うつつの少年に

スピリットは、

動物や自然界の姿で現れ、

本来の生きる使命を

伝えてくれるのです。

 

この少年に示されたメッセージは、

フクロウのイメージでした。

 

 

何故生きるのか、

自分が存在する理由はなにか、

この生でどの役割を負って

行くべきなのか。

 

過酷なビジョンクエストを終え、

長老と共に戻った少年は

スピリットの声から

真の知識の解釈を受けます。

 

フクロウが示したメッセージは、

将来部族の長老となり

古代からの智慧を

部族に伝えていく事だと

理解します。

 

ダコタ族の長老の体験談は

そこで終わっていました。

 

 

マークさんは

科学者としての

訓練を受けたインテリで、

伝説や文化的な伝承に

尊敬は払うものの、

迷信などを

そのまま信じるタイプではありません。

 

しかし、その長老の話を読んだ時、

自分はこの体験をしなくてはいけない

と思ったのだそうです。

どうしてそう思ったのかは

今でもよくわかりません。

 

その話を読んでしばらくしてから

マークさんは

現代のビジョンクエストに

参加します。

ワシントン州の山の中での体験は、

準備期間を含めて

約一週間の体験でした。

 

生きる目的を探る人達は、

現代のビジョンクエストに参加して、

自分なりの答を見つけようと

するのです。

 

マークさんの参加したものは、

ネイティブアメリカンの

伝統的なものよりは、

勿論ずっと

安全性などを考慮したものでした。

断食は実行しましたが、

水分補給は許され、

必要があればトイレなども

行く事ができました。

 

夜はテントで寝る事も出来ました。

 

聖なるパイプに使われるらしい

麻薬などは一切使わず、

瞑想呼吸法とイメージを用いた方法で

これもまた安全性を考慮したもの

のようでした。

 

それが本来のネイティブアメリカンの

ビジョンクエストと同じかどうかは

マークさんにはわかりません。

 

しかし、数日間の断食の後に

荒野にテントを張り、

数日を過ごした

最後の晩の事でした。

 

テントの周りを

大きな動物が

動き回るような足音で

マークさんは夜中に目を覚ましました。

 

一瞬緊張しましたが、

恐怖心はありませんでした。

そして、テントの一番上の

透明なビニールの部分から

星空が見える事に気が付きました。

 

満天星の夜空でした。

 

動物の足音はすぐ消えて、

静寂が戻りました。

 

そして、突然

横になっていた自分の上に

大きな年老いた女性の顔が

見える事に気が付きました。

 

テントも星空も見えるのに

まるで黒板に

白いチョークで書いたかのように

老婆の顔も

輪郭がはっきり見えるのです。

 

マークさんは畏敬を持って

その老婆の顔を見つめました。

 

その顔は、

マークさんと

マークさんの周りとを

見降ろしているように見えました。

 

老婆は

マークさんを包み込むような

深いまなざしをしていましたが、

同時に

これ以上ないほどの

苦悩と悲しみの表情をしていました。

 

「地球が悲しんでいる」、

と、マークさんは思いました。

 

「ガイヤが悲しみを伝えている」、

海洋科学者のマークさんは、

どこからそんなことを考えたのか

わかりません。

しかし、深い理解がマークさんを

包んでいました。

 

僕たちを守っている

母なる地球が

心の底から悲しんでいるんだ。

 

地球の汚染を

海の汚染を

自然破壊を

ガイヤが憂えている。

 

その時、マークさんは

自分の人生の目的はこれだと

思いました。

生きている自分がいて、

その自分が

続けていくべき仕事は

これなんだ。

 

頭でわかったのではなく、

魂のレベルでそれが

分かったのです。

 

何も迷わず、

自分にできるスキルを持って

受けた教育と経験と研究をし続ける、

そして、

ガイヤの苦しみを少しでも

和らげる、

ガイヤの悲しみがわかる

次の世代を教育する、

それが自分の人生の目的だ。

 

それはとても深いレベルの

理解でした。

夢の中でありながら、

これ以上ないほどの

リアリティを持った

納得だったのです。

 

マークさんは

その時の畏敬の念を今でも

持ち続けていると言います。

そして、

それまでのもんもんとした

小さい個人の自分の悩みが

ガイヤの目から見たら

本当に小さいものである事に気が付きます。

 

自分の人生の目的の方向性を

はっきり示してくれた

そのビジョンが、

たとえ自分の勝手に作り上げた

イメージに過ぎなかったとしても

自分と深くつながっている事を

理解しました。

 

その時から

大学という場で

海洋科学という分野で

仕事を続けていく事の責任と自信を

感じました。

その気持ちは、

今でも少しも変わらず

強く感じているのだそうです。

 

たぶんもう60代近い

大学教授のマークさんは

多くの学生を教育し

全米でもトップの尊敬を受けている

海洋科学者です。

 

そのマークさんが話してくれた

このビジョンクエストの体験談は、

コーチングを受ける方がたに

是非聞いていただきたいお話だと

思いました。

 

自分の存在意味が分からず

苦しんでいる方が

多くいらっしゃいます。

 

「自分の存在の意味」なんて、

難しく聞こえるテーマです。

でも、

実は自分のすぐ手元に

その答えがある事が

多い事に気づかされます。

 

マークさんのように

山の中のビジョンクエストに

わざわざ出かけて行かなくても、

毎日の生活の中に

答があるのかもしれないと思います。

 

それを「精霊の声」と呼んでもよし、

「内なる魂の声」と呼んでもよし、

単に「本当に好きな事」

「本当にしたい事」と

呼んでもよし。

 

私たちにできる事は

ほんの少し自分との時間を取って、

その声に耳を傾ける事なのでは、

と思います。

 

それが見つかった時、

ガイヤも、

私達の為に喜んでくれるのではないか

と思うのです。

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