#102 悲嘆療法

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催眠療法は心理療法の一つです。

その中でも特に興味深い二つの療法があります。

「悲嘆療法」と「退行療法」と呼ばれる方法です。

 

今日はその第一回目として

「悲嘆療法」についてお届けします。

 

高木和代さんは、

催眠療法師、

英語でヒプノセラピストです。

日本人、アメリカ人を対象に

ハワイのカイルアで、

このヒプノセラピーをしていますが、

どんなやり方で、

どういった癒しをもたらす

ことができるのか

お話を伺いました。

 

高木さんのヒプノ歴は約5年。

特に、家族や親しい方を亡くされ、

その悲しみから

立ち直れていない方の為に、

「悲嘆療法」という催眠療法をしています。

 

ゆかり:悲嘆療法というのはどんな

方法か説明してください。

 

高木:家族とか友達とか

自分の大切な方を亡くされて、

その悲しみから立ち直れていない方がたが

いらっしゃいます。

ではなぜ、

その悲しみから立ち直れていないのか、

 

それは多くの方が、

まだ完了していない

未完のコミュニケーションが

ある場合が多いんですね。

 

亡くなる時に、

聴きたい事があった、

伝えたい事があったけれども、

伝える事が出来なかった、

そういう経験をお持ちの方が多い。

 

そういう方たちは、

あの事を言いたかった、

聴きたかったという思いが

ずっと残されていますが、

その方たちはもう亡くなられていますから、

もう戻っては来ないわけです。

 

コミュニケーションが

ストップされたままなんですね。

悲嘆療法によって、

その未完のコミュニケーションが可能になる、

知りたかったことが知れる、

それによって

癒されるという事なんですね。

 

例えば、お子さんを亡くしたお母さんがいる。

子供が不憫で可哀そうで、

あれもしてやりたかった、

これもしてやりたかったと、

未完の想いが募っています。

 

悲嘆療法では、具体的には

こんなプロセスを踏みます。

 

ゆかり:催眠にかかった状態になると、

まるで子供がそこに

出てきたような気持ちがするんですか?

高木:そうです。

その方には自分の亡くなった子供さんが

そこにいるという風に感じるわけです。

抱きしめたりもできますし、

抱きしめた時、

人を抱いている感触が

感じられるわけなんです。

 

ゆかり:それはその方の潜在意識の中に、

すでにその子を抱いたという

記憶が残っているからですか?

高木:お母さんには

目の前にいるように見えて

会話もできるわけなんです。

 

悲嘆療法では、催眠にかかった方が

亡くなった方との会話を通じた癒しを

もたらすという考え方をします。

具体的に

どうしたら会話ができるのでしょうか。

 

高木:会話は「人格交代」と言いまして、

自分が言いたかった事を聞く、

自分が

相手になったという状態になります。

 

お母さんに「子供が見えますか?」って聞くと、

「見えます」って言いますよね。

「どんな姿ですか」

「どんな服装していますか」

「どんな顔つきをしていますか」って聞きます。

そして、三つ数えて

「貴方は~ちゃんの中に入って行きますよ」と言うと、

その(子供の)中に入って行くわけです。

 

ゆかり:催眠によって

亡くなった方の存在が感じられるだけでなく、

感情面の中に、まるで自分が

その子供になったように、

入る事ができるという事ですか。

 

高木:そうですね。

それで質問の答えを

お母さんに言う事ができる、

答を知ったお母さんに

「~ちゃん、今度はお母さんに戻りますよ」

っていうと、戻るわけです。

 

ゆかり:顕在意識から見れば、

1人芝居をやっているような?

 

高木:そうですね。

一人芝居と言えるかもしれません。

ただ、本人には

本当に子供と話をしているように感じられる。

子供が言った事というのは、

自分の中にある事なんですよね。

 

ゆかり:自分の中にある事っていうのは、

自分が聞きたかったことなんでしょうか。

 

高木:そうかもしれませんね。

自分が「そういう風に言ってくれるかなあ」

と思っていた事を

子供が言ってくれるのかもしれません。

 

ゆかり:両親や祖父母が

亡くなったという例ですと、

どういう質問が多いんでしょうか。

 

高木:あの時はこういう事があったけれど、

どうしてああいう事をしたのとか。

自分が子供の時に何か親の方の問題があって、

自分が傷ついたりしている場合、

そういう事の真相を聞いて、

理解したりする場合があるわけです。

 

ゆかり:あの時は意地悪のように感じたけれど、

大人の人格になって考えて見ると、

あの時は理由があって、

この子の為を思ってそういう事を言った、

そういう事をしたという事が分かると、

気持ちが楽になるという事ですか。

高木:そうですね。

 

悲嘆療法における人格交代は

催眠にかかる事ができる、

催眠状態になれるということが

第一条件ですが、

催眠というのは誰もがかかる事が

出来る状態なのでしょうか。

 

ゆかり:催眠にかからない人っていうのは、いるんですか。

 

高木:普通は皆さん、かかるんですけれど、

リラックスができない方もいらっしゃるんですよね。

それから想像できない方。

それも、リラックスと想像を何回か練習したら、

できるようになります。

 

ただ、脳自体に記憶とかの問題がある方、

例えば認知症、

そういう方は難しいですね。

それから積極的に催眠に

かかってみようというお気持ちがない方、

これは、ちょっと「まやかしだ」と、

「入らないぞ」と思っていらっしゃる方は、

入れないです。

ゆかり:脳に問題のない方、

それから意識的に療法を

受けてみたいと思っている方は、

ほとんど入るということですか。

 

高木:程度はありますよ。

深く入る方、軽い状態の方も

いらっしゃいますね。

何回もやり続ける事によって、

深く深く入れるようになります。

 

ゆかり:深く深くというのは催眠の、

潜在意識の中に入って行くという事ですね。

 

高木:そうですね。

練習するともっとクリアに

見えるようになってきます。

 

ゆかり:見えるようになると言っても、

目を閉じているわけですよね。

 

高木:目は閉じていますから、

何か頭の中に浮かんでくるという感じですね。

 

ですから、イマジネーション、

想像するという事が出来ないと、

難しいですよね。

目を開けて見えるわけではないわけですから。

 

実際に高木さんが悲嘆療法をして、

悲しみから立ち上がったという例について

お話していただきました。

高木:一人男性の方で、

自分を育ててくれた

本当のお母さんではないんですが、

そのお母さんに会いたいという事でした。

 

ゆかり:そのお母さんは亡くなられていたんですね。

 

高木:そうです。

その方は何もうまくいっていない

という状態の方だったんですね。

仕事もうまくいっていない、

ガールフレンドとも別れてしまっていて、

自分はいったいどうしたらいいのか、

何をしたらいいのか分からない

という状態の方だったんです。

 

その方が催眠の中で、

お母さんに会われて、

お母さんの愛、

(お母さんが)おっしゃっていた

クリスチャンの生き方に

反抗して生きてきたけれど、

もう一度クリスチャンの生き方を

するのが一番だと言われました。

 

ゆかり:それは催眠の中で

お母さんが出てきて、

キリストの生きかたで

生きていきなさいと言われた。

 

高木:そうですね。

 

ゆかり:その方は催眠でそう言われて、

納得したんですか・

 

高木:はい。

それからは教会を中心の生活を始め、

それが自分にとっては

本当に幸せって思われて、

今も元気でいらしゃると思います。

 

ゆかり:潜在意識の中に

お母さんの言っていられたものが

深く入っていて、

自分の中の智慧に達する事が出来た?

 

高木:そういう風に言えるかもしれませんね。

これは自分の潜在意識の中にある、

直観とか、経験、感覚

というようなものから来ていますから。

勿論潜在意識のもっと下の方に行くと、

集団の無意識という状態が

あって、

お母さんの潜在意識とも

繋がっているという考え方もあるんですが、

 

ゆかり:ユングなどの考え方ですね。

 

高木:そうですね。この方は

自分の顕在では気づいていなかったけれど、

潜在意識の中にはあった事が、

お母さんが目の前に現れて、

子供の時同じように言われていたように、

話してくれた。

それが出てきたんだと思うんですね。

 

ゆかり:その方は

クリスチャンになられたって言う事だったんですが、

キリスト教の方が、

想像の世界でも、

亡くなった人に会うとか、

そういう事に対する抵抗のようなものは、

なかったんですか。

 

高木:ありました。

その方はとても抵抗があって、

でも悲嘆療法をしたい、

悲嘆療法でお母さんに

とても会いたがっていらっしゃったんですよ。

私はそれは

幽霊とかいう事ではないですよ、と。

 

亡くなっても、

自分の中にいつもいるっていう感覚は

皆さん持っていますよね。

 

自分の中にいるお母さんに

登場してもらうっていうことなので、

心配なことはないです、

それは全部自分の

潜在意識の中から出てきたものですよ、と。

 

この悲嘆療法は、

例えば自分一人ではできないものでしょうか。

亡き人を想い、

仏壇に手を合わせ、

写真を見て故人を偲ぶということは

多くの人がしている事ですが、

高木さんはこう説明してくださいました。

 

高木:自己催眠という方法があって、

自分で催眠に入って、

会いたい方と会うという事は

可能だと思います。

 

違うのは、これは心理療法であって、

セラピストが一緒にいて、

いろいろな質問やサポートをして、

その方が望んでいらっしゃる、

いい方向にそれを

導いてくれるっていう所が

大切だと思いますね。

 

ゆかり:質問をされるということで、

どうしていったらいいのかな

という事が分かるということですね。

 

高木:そうですね。

自分ではただその存在を感じる、

話をするという事は可能だと思いますが、

 

どういう風になりたいのかというのは

セラピストは知っていますから、

そういう風に話を進めていく、

 

クライアントが何を学んだか、

何に気づいたかという事を口に出して、

話していただくので、

そうするとはっきりと、

自分自身よく分かるんですね。

 

自分はこうなんだ、

こうしたいんだという意識が

生まれるわけです。

 

催眠は記憶だといわれるんですが、

記憶を再構築していく、

創り出していく、

または消していくという事が

可能なわけですね。

 

例えば、禁煙をする、

煙草はまずくて吸えない

という暗示が入ったら、

それが新しくなります。

 

今までは煙草がおいしいって言う、

それが煙草を口にしたらもう

「ウッ」となるような暗示を入れれば、

それが変わってしまうわけなんです。

 

ゆかり:それは記憶が自分の中で、

入れ替わるという事なんですね。

それによって行動も変わる、と。

 

高木:そうですね。

悲嘆の場合は、

自分が聞きたかった事、

知りたかった事、

それは自分の中から

答が出てきているんですけれども、

亡くなった方への思いとか、

勘違いしていた事とかが

クリアになってくる。

 

それが新しく潜在意識の中の

記憶として残るわけなんです。

 

それですから、

ルーツの、根本から変わってしまう。

 

ゆかり:そういうパワフルな力が

悲嘆療法という催眠の療法、

潜在意識の中にあるわけですね。

 

(催眠療法―退行療法に続く)

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