#44 ミニマリスト
20万人の心をつかんだ二人の青年がいます。
ライアンとジョシュ。
自分達をザ・ミニマリストと呼んでいます。
一人は、アル中とDVの家庭で育ち、
もう一人も麻薬中毒の母親。
喧嘩の絶えなかった両親たちが
それぞれ離婚をした後は、
福祉制度の世話になる
母子家庭に育ちました。
オハイオ州の高校で同級生だった二人は、
体形も性格も趣味も違いましたが、
なぜか気が合う二人でした。
貧困家庭に育った若者二人は、
「金の心配のない暮らしがしたい」
「買いたいモノが、直ぐ買えるようになりたい」と
テクノロジー企業に就職、
朝から晩まで働くワーカホリックの
猛烈社員の20代を過ごしました。
「5歳の子供にも携帯電話を売りつけようとした」
恥知らずの営業マンだったと
ライアンは言います。
役職にも付き、年収もあがり、
家も、車も、コンピュターも、スポーツグッズも
服も、家具も、台所用品も、
欲しいものは、何でも
手に入るようになった二人。
早々とアメリカンドリームを達成した
若き成功者としての生活を
エンジョイしていました。
しかし、
収入以上の消費をしていたライフスタイルで
借金はかさみ、台所は火の車。
表面の成功とは裏腹に
心は満たされない生活。
ギクシャクの人間関係。
「満たされない毎日をモノで満たそうとしていた」
と二人はその頃の生活を
振り返ります。
「金はできたけど、結局
親たちと変わらない生活をしている
自分に気が付いた」
ストレスたっぷりの不規則な生活で、
娯楽といえば、酒、麻薬、買い物。
ライアンの体重は不健康に増え、
イライラと不機嫌な事が多く、
いつも鬱の状態でした。
その頃、ジョシュも、
アル中の母親が肺がんで亡くなり
同じ月に数年連れ添った
奥さんとも離婚する事になりました。
30代になるかならないうちに
「幸福って一体なんだろう」と
考えるチャンスが巡ってきたのです。
生活を簡素化し、
本当に必要なモノ、
大切なモノ、大切な人、
人間関係を見つめ
ミニマムで生きてみようと決心したのは
ジョシュの方が先でした。
「ミニマリズムって呼ぶらしい」
ジョシュは、ライアンにそう伝えました。
アメリカの平均家庭には
何と30万個のモノがあふれているのだそうです。
ほとんど使わないダイニングルーム、
巨大なホームムービー、
箱に入ったままのギフト、
いつか使う事もあるだろうと取ってある
モノ、モノ、モノ、
そして
モノ。
モノに占領されて、
いつしか小さくなって生活している人間たち。
それでも足らずに
ミニ倉庫を借りてモノを保管している人々。
それでも足らずに
血眼になってセールに駆け付ける消費者たち。
相手の都合も考えず
買っては与え、買ってはあげの
親切押し売りの親戚たち。
テレビでもネットでも
ハイウエイも、街を歩いていても
新しいモノがなければ
何かが不足しているように
思いこまされている私たち。
知らず知らずのうちに
同じような価値観を
次の世代に伝えてしまっている
私たち。
ジョシュは、
テレビがない生活から始めました。
次に家に
ケーブルもインターネットがない生活を数か月。
携帯のない生活も実験。
服も、90日間着なければドネーション。
本も読み終わったら寄付。
思い出の写真はデジタル化。
スーパーに行くときも
買い物リストになければ
衝動買いは一切しないという訓練も始めました。
リビングが二つもあった持ち家を処分して
新しくできた心の空間の中で
自分探し。
どんなに高価なモノに囲まれていても
得る事が出来なかった
素晴らしい贅沢である事に気が付いた時
巡り合ったのがミニマリズムでした。
自分が変わると
次第に同調者が増えてきます。
タイニーハウスと呼ばれる
最小限必要な空間で暮らす若者たち。
身の回りの所有物を二つのバックに入れて
世界を見て回る青年。
瞑想で心を見つめる新しい世代。
量より質。
手放すことで得る事を学ぶ若夫婦。
現代のミニマリズムは、
モダンアートや建築、音楽分野で始まったんだそうです。
シンプルで簡素化された、原点に戻った
デザインやパターン。
そこには、
例えば日本の竜安寺や禅文化からの
影響も強くあったとか。
コンセプトとしてのミニマリズムは
物質主義、消費主義に背を向け始めた
新しい世代の心を
つかみました。
果てしなく買い求める消費文化への反動は
モノを簡素化する事から
心の簡素化への
最短距離だったのです。
シンプルライフは、
単なる断捨離や整理整頓だけではないと
ミニマリストの二人は宣言します。
必要なモノは買って使おう。
簡素化するのはモノ、出費だけでなく、
人間関係も。
情報も。
ストレスも。
モノが自分達を幸福にしないなら
一体何が幸福にするのだろうと考えて
Passion(情熱)とMission(使命)に
行きついた二人のアメリカの青年。
ライアン・ニコデーマス
ジョシュア・フィールズ・ミルバーン
「モノは使おう。人は愛そう!
だって、
その反対じゃあ、
うまくいかないんだから」
Love People, Use things
Because the opposite never works
やや格好良すぎるかも。
でも本当の意味の勝ち組になった二人の青年。
イケている男たちの
無理をしない
背伸びをしない
ミニマリスト宣言。
ミニマリストグループは
全国各地に
静かに広がっているそうです。
そんなアメリカの若者たちに
拍手とエールを送り、
自分も見習わせてもらおうと思い
皆さんとシェアすることにしました。
ザ・ミニマリスト
https://www.theminimalists.com/about/