#24 空間の整理整頓・心の整理整頓

ローレス陽子(Yoko Lawless)さんは、アメリカの首都ワシントンDCを基盤に、

家やオフィス空間のエネルギーを高めるコーチングという

ユニークなお仕事をしている方です。

Yoko Lawless, You and Space

Yoko Lawless, You and Space

 

陽子さんが、このお仕事をする際に基本にしている考え方は、

同じ波動の物事が引き寄せ合う」という「法則」。

 

「同じ波動の人同志が引き合う」

    -つまり波長が合う人は、引きあう傾向にある、

という考えからもっと進んで、

「人とモノ、事物、人と事象も引き合う」という考え方だそうです。

 

自分が欲しいと思う人生を描いたら、

そのレベルの波動に自分の波動を合わせるのが、

そこに到達する近道なんだ

という事を学んでからは、

 

どうやったらそれが到達できるだろう、

どうやったら、

他の人にもそれを到達させてあげられるだろうと、

模索しました。

 

 

「簡単なんですよ。

自分の気持ちが清らかに高揚するような空間、

自分のレベルより一段高いかなあという空間に

身を置けばいいの。

空間が自分の「気」の質を高めてくれる。

そうすると、

それにあった人や、物事が入ってくるようになるんですよ」

と先生が教えてくれました。

 

 

陽子さんが空間創造コーチングで実際に行うことは、

 

整理整頓をシステム化、

断捨離のお手伝い、

家具や置物の選択や配置など、

風水的な要素も取り入れたステージング、

 

健康的で、

気持ちのよ~い、

先の見通しがよくなるような空間を

創造するお手伝いなんだそうです。

 

家を売りたいと思っている方には、

最高の状態でオープンハウスができるように、お手伝いもします。

 

ここに、空間創造コーチングを実際に受けた

クライアントさんからの声を一部紹介します。

 

「私はコストのかかる古い家を、

損せずにどうやって売ったらいいのかと悩んでいました。

夫の転職が突然決まり、どうしよう!今この家を売ったら大損をすることになると、

途方に暮れていた時に、陽子さんに出会いました。

ごちゃごちゃしていて、どこから手をつかたらいいかわからない。

修理にあまりお金をかけられない。

売り手市場ではないので、タイミングが悪い。

 

陽子さんは「最高を目指しましょう!」と、

どん底から強気の姿勢に引き上げてくれました。

 

どん底からどのようにスイッチしたか?というと、

まず、

イメージするように言われました。

私はマイナス思考気味で、

理想をイメージすることさえ、(陽子さんの)お手伝いが必要でした。

 

家族で幸せな気持ちでディナーを食べているシーンとか、

お友達を呼んで楽しく子供を遊ばせているシーンなど

具体的にイメージしました。

 

壁の色や家具の配置など、物理的にきれいにすることだけでなく、

家の中で暮らす家族がどんな気持ちになれる空間が欲しいのか、

それをイメージすることを学びました。

 

不動産屋さんからは最初、24万5000ドル(日本円で約2753万円)くらいが妥当と言われましたが、

プロジェクトが終了した後に見せたら27万9000ドル(3100万円)で売りに出そうと言われました。

結果的には、29万ドル(3200万円)で売れました。」

 

陽子さんのコーチングを受けて、

売ろうと思っていた家が

当初の価格より5万ドル近くも高く売れた、という例です。

 

「家を売り買いする」という行為は

「空間のエネルギーを回す」という行為。

 

この方は、清らかになったエネルギーを、

次の方に渡すという行為をしたわけです、

 

お金が天下を回るように、気持ちというエネルギーも回り回っているのだと考えると、

このお仕事がさらに楽しくなるんですという陽子さん。

 

陽子さんのコーチングを受けると、

断捨離、お片付け、お掃除のレベルを超え、

その人やご家庭の空間にあるエネルギーが、ぐいぐいと上昇していきます。

売値価格が20%も上がった、いうクライアントさんもいます。

 

気持ちのよい空間の創造は、

実は「心の整理整頓と直結」しているのだとのこと。

 

 

「空間のエネルギーを高める」というのはどんなことなんでしょうか。

陽子さんは先生の言葉を教えてくださいました。

 

 

「周囲に変化を期待したり強いたりしてはダメ。

率先して自分の波動を上げるだけでいい。」

 

陽子さんも、まず大切な土台となる自分の家の

「気」、エネルギーを高めることから始めました。

「こんなに簡単なことなら私にもできると思って、

勉強しながら一生けん命して来たことが、

今はライフワークとなってしまいました。」

 

陽子さんに、

私達が、’今日、今からできる「空間創造」「気を高める」アドバイスを

お願いしました。

 

 

「あえてお伝えしたいことをひとつ選ぶとすると、

水回りを清潔にする習慣を身につけること

特にトイレ。

 

中小企業を対象としたあるデータがあるのですが、

成功している会社のトイレと駐車場は必ず清掃が行き届いているというデータです。

本田の創設者、本田宗一郎さんは工場のトイレを

自分で清掃していたといいますね。

松下幸之助さんもそうです。

 

掃除をすることによって、

空間の「気」が良くなるだけでなく、

その人自身の「気」に変化が起こり、

それが会社全体に広がるという考え方もできます。

 

 

日本の大学で経営学を教えていらっしゃる大森信先生が、

500社以上の中小企業を対象としたリサーのデータをもち、

掃除が経営に与える効果を本にされています。

たかが掃除、されど掃除なんですよ。

 

 

Yoko Lawless (ローレス陽子)You and Space 

https://www.youandspace.com/

#20 ユーマの勇気

ユーマは、18か月前に、恋人を自死で失うという、悲惨な経験をしました。

「経験をしました」と今私は過去形で書きましたが、

彼の「経験」は、今も続いています。

恋人の死の原因は、精神的な事、家族の事から医学的な事まで、私達にはわからない事が、いろいろあったと思います。残された彼にも、家族にも、はっきりした答は永遠にわからないことでしょう。

ユーマは、留学先のハワイで会った、この明るいローカルの娘さんをこよなく愛していました。彼が20年という短い人生で過ごした最高の時だったのです。

二人が一緒だった時間は、あまりにも短かったのですが、

一日一日が、時間の単位まで思い出せるほど、ユーマにとっては、鮮明で、強烈で、夢の中にいるような時間でした。

彼女は、日本が大好き、柔道が強く、

キラキラした笑顔がハワイの太陽のような娘さんでした。

二人は、いつか一緒に日本で暮らす事、もし子供ができたら3人、

子供たちにはハワイの名前を付けようなどと、話していました。

 

彼女がこの世を去る前、最後に会ったのが、ユーマでした。

そして、その最後の別れ方が、喧嘩別れであったことで、

ユーマの苦しみは一層激しいものとなりました。

ユーマは取り返しがつかない出来事があってから、あの痴話喧嘩が、

彼女の心を、深く傷つけ、自死にまで追いやるきっかけに

なったと思ってしまったのでした。

しかし、繰り返しますが、

その本当の理由は、決してわかる事はないでしょう。

 

悲しい事、取り返しがつかない事、苦しみの原因となることは、

私達、皆にある事です。

 

ユーマの場合は、もちろん

事件当初の激しいショック、

あり得ない事が起こってしまった事への深い喪失感、

恋人への執着、大切な人を守れなかったという自己嫌悪、

何度も何度も思い出してしまう最後の別れの場面、

ああすればよかった、こうすればよかったと悪夢のように繰り返される自責の念。

引きこもり。孤立感。いつまでも果てる事のない後悔、

絶望。

 

外部者にはわかりようのない、体験した人にしかわからない、

ローラーコースターのような18か月間でした。

 

泣くことさえできないほどの喪失感の中で、

若いユーマは、たった一人で、一生懸命闘っていました。

彼は一年近く、毎日亡くなった恋人のお墓を訊ね、そこで時間を過ごしていました。

彼はその墓参りを彼女との「デート」と呼んでいましたが、

それが彼の長い長い「悼みの儀式」でした。

 

学生カウンセラーだった私は、彼が時々ふらりと来てくれると、

「よかった。朝、起きれたね。クラスに来ているんだね」と

本当にうれしかったのを覚えています。

 

ユーマの事をお話したいと思ったのは、もちろん彼の苦しみや彼に起こってしまった悲しい出来事について、お話ししたかった事もあります。

しかし、むしろ、

その後の18か月間のユーマの「勇気」について、お話ししたかったからです。

この勇気は、苦しみを乗り越えるレジリエンスと呼べるものだと思います。

一年がたち、恋人の命日が過ぎました。

残されたものにとって、命日や故人の誕生日、最初のデートの日など、記念となる日は、特につらい日です。

彼はそれを想い出の場所を訊ねる事で、そして、彼女の写真や大好きな音楽などで短いビデオクリップを制作し続ける事で、何とか乗り切りました。

日本のご家族、心理カウンセラー、友人達が支えてくれることにも、心を少しずつ開いていった事も、ユーマの心を助けたことと思います。

 

ユーマは、一年が過ぎた後で、私と話し合いをしました。

自分に起こった事を、文章にする事に同意してくれました。

それが、自分への癒し、若くして逝ってしまった恋人への

悼みの作業である事はもちろんですが、

自分が通った道を、もし万が一、誰かがまた通らなくてはいけない時、

自分のした体験が、少しでも、誰かの役に立つのではないかと思ったからでした。

 

私は、その話をしてくれるユーマの大人びた表情を見ました。

そこには、自分の悲しみや苦悩の海でおぼれかけていた一年前のユーマでなく、

一人の成長した大人の顔がありました。

それは、自分以外の人への、深い思いやりを持つことができるようになった

大人の男性の表情でした。

恋人を失った事を受け入れ、

恋人を失った事実と一緒に生きていく、

自分だけで生きているのではない、

自分の悲しみだけが悲しみなのではない。

ユーマの表情は、言葉にはならなくても、そう雄弁に語っているようでした。

 

レジリエンスは、精神的回復力、自発的治癒力などと訳される心理学の言葉です。

災害や事故や犯罪などに遭遇してしまった方がたが、それに耐え、そのストレスを跳ね返し、バランスの取れた平衡状態を取り戻す能力のことに使われています。

そんな心理学の言葉を使わなくても、

ユーマの表情を見れば、私達には誰にでも、生き続ける勇気をもって生まれてきている事が分かります。

苦しみや悲しみは、否定するだけではなく、

ある時はそれらと、肩を並べて生きて行くこともしなくてはいけないと、気が付くのです。

ユーマがそうしたように、それに気が付く事が、本当の勇気なのです。

 

恋人の死の直後、恋人のお父さんが、

ユーマに言ってくれた言葉がありました。

愛娘の亡骸の前で、子供のように大声で、

ボロボロになって泣いていたお父さんでした。

でも、そのお父さんがユーマにこういってくれたそうです。

「彼女の分まで生きてくれ」

 

ユーマの心の記録は、今年の彼女の命日までに電子書籍か、一般書籍化で、出版する方向に持っていけたらいいなと計画しています。

ユーマの作った恋人との想い出のビデオへのリンクも入れて、自分の通った軌跡を正直に忠実に記録して。まだ出版社も決まっていませんが、ユーマの経験がいつかシェアできればいいと思います。

ユーマの事をブログとポッドキャストで話すよと伝えると、勇気ある彼は、

「実名を使ってください」と許可をくれました。

また本も実名で出してみたいと言っています。

その時は、是非、皆さんにも読んでいただき、彼の製作したビデオクリップなども見ていただきたいと思います。

 

 

#17 エマ王妃とキサー・ゴータミー

 

キサーゴータミー(スリランカの切手から)   

エマ王妃 (Wikipediaの写真より)

エマ王妃 (Wikipediaの写真より)

ハワイには王国があったので、Queen Emma、エマ王妃様という方がいました。

1836年、日本でいうと江戸時代の終わり頃に生まれた王妃様です。

ホノルルのエリート私立学校のイオラニ校、大手病院のクィーンズホスピタル、

観光名所にもなっているクイーンエマ・サマーパレスなどを作った王妃様です。

この王妃様、20歳の頃に、カメハメハ4世という王様と結婚をします。結婚後2年後にはプリンス・アルバートという珠のような王子様にも恵まれて、母として妻としての幸せな人生を送り始めました。

ところが、このアルバート王子が4歳になったばかりに、突然病死をするという不幸に襲われてしまいました。若い父母の悲嘆は激しく、何を持ってしても、幼子を亡くすという苦しみを癒すことはできませんでした。王妃はハワイ語のチャント、詠唱(えいしょう)や歌にも長け、歌唱家でもあったので、ハワイ語で子を悼む詩や歌を何曲も作って、苦しみを乗り越えようとしたそうです。

しかし、エマ王妃の夫のカメハメハ王4世が、翌年、息子を追うかのように、これまた急死をするという2重の不幸を経験する事になります。愛する家族を失った苦しみは、王妃様も私達平民も同じです。王妃様はホノルルのヌウアヌにあるサマーパレスに引きこもり、外部とは一切孤立して嘆きの毎日を送りました。

それでも、エマ王妃は夫の死後2年して英国を訪れたそうです。船の長旅が、少しでも苦しみを和らげることができるのではと、思った側近たちに励まされたからです。その頃、42歳で、同じく夫を亡くした英国のビクトリア女王と意気投合し、お互いの境遇を語り合ったという歴史記録が残っています。

英国を旅し、ビクトリア女王と会って、一時は元気を取り戻したかのように見えたエマ王妃でしたが、ハワイに戻るとやはり、夫と幼い息子の思い出に、胸が張り裂けそうな心に戻ってしまいます。そこで、側近たちがエマ王妃に、ハワイの中でも癒しの島であるカウアイ島に行くことを勧めます。亡くなった人々の想い出にあふれたホノルルから、カウアイ島に渡ったエマ王妃。カウアイ島でも、心は浮くことなく、悲しみは続いたままでした。

その頃、カウアイは熱帯サイクロン、台風、に見舞われて、多くの死傷者が出ました。家屋は崩壊し、生活の糧をなくした人々。たとえ生き残っても食物や薬品も不足する不自由な生活を余儀なくされたのです。親を失った子供たちは、泥だらけで土の上に寝るような災害後の生活でした。

エマ王妃は、夫と息子とを失った悲嘆の生活から、助けを求める人々のために、初めて外に出ました。自分の悲しみはとりあえずおいて、今、目の前で苦しんでいる人達を、助ける事に集中したのです。掘っ立て小屋の簡易病院で、自ら水を運び、包帯を代え、孤児となった子供たちに歌を歌って聞かせて、慰めました。老人に手を貸し、賄いを手伝い、困っている人達のために、寝る間も惜しんで、手を差し伸べたのです。

カウアイ島の経験から、王妃はやっと自分の苦しみに癒しを見出しました。自分以外の人々をねぎらい、助け、共に苦しむ事で、苦しみや悲しみがやっと薄らぐ事ができたのです。

 

エマ王妃の話は、子を亡くして芥子粒(けしつぶ)を探しまわるインドの若い母、キサー・ゴータミーの話を思い起こさせます。ご存知の方もあると思いますが、有名な法話です。

半狂乱になって幼子の遺骸を抱えたままブッダをたずねたキサー・ゴータミー。子を生き返らせてくれるように、ブッダに泣きながら必死に頼みます。キサー・ゴータミーは実はその数年前に、夫も亡くしており、忘れ形見の子供まで死なせてしまった悲嘆は、言葉にすることができないほどでした。

ブッダは、この哀れな母に「子を生き返らせる前にあなたはしなくてはならない事がある」と言います。

「何でもしまう」というキサー・ゴータミーに、それでは「誰も死人を出した事がない家から、白い芥子粒をなん粒かもらってくるように」と伝えます。

キサー・ゴータミーは、言われた通り、食べ物も水もほとんど口にせず、寝る間も惜しんで、家から家へ必死で、芥子粒を探し回ります。しかし、次第に一軒たりとも「死人を出した事がない家」「悲しみがない家」は存在しない事に気が付くのです。

9日後ブッダの元に戻ったキサー・ゴータミーの腕の中に子供の遺体は、もうありませんでした。そして、泣き叫んでいた女の表情は、穏やかで平安を持ったものになっていたと伝えられています。

 

ハワイのエマ王妃も、インドのキサー・ゴータミーも、

世界中の人々も、

あなたも私も、苦しみを持たないものはないとこの話は伝えていると思います。

愛するものを亡くす苦しみ、家や財産や地位をなくす、または得たいものが得られない苦しみ、それが、自分だけのものではないとわかった時、苦しみがなくなってしまうわけではありません。

でも、生きとし生けるものへ心を寄せる事によって、私達はどんなに救われる事でしょう。

ハワイのエマ王妃が作ったクイーンズ病院では、今でも何千、何万の人達が、癒されており、イオラニ校では、次の世代の子供たちが教育を受けています。キサー・ゴータミーも、悟りを開いたのち仏の弟子の尼僧となり、世の人々の悟りの道を助けたと伝えられています。

苦しんだり、苦労をしたりしている方々の、コーチングやカウンセリングをしていて、どうしてもご自分の苦しみから抜け出る事ができなかった方が、自分の苦労から一歩外にでて、周りの人達に心を寄せる事で、自分も高められ、苦しみから脱した方がたの例をたくさん見てきました。

例えば、ボランティアをする、そんなオーバーなことでなくても、道に落ちたゴミを拾う、通りがかりの人に微笑みかける、友人や家族に優しい言葉をかける、なんでもいいのです、あなたのその「一歩」が、知らないうちに誰かを助けているかもしれません。

あなたが助ける事ができる人が、直ぐ傍にいるのです。

あなたにとってそれは誰でしょうか。

#10 アドバイスなんかいらない

聴くことの大切さは、コーチングでは、基本中の基本です。

でも、聴くという事は、簡単なようでいて、決してそうでもないのが現実です。

私達は、聴いてあげて、アドバイスをして、と簡単に言いますが、

本当にその人のために、その人の身になって聞くことができているんでしょうか。

 

あるアメリカのティーンエイジャーがこんなことを書いています。

問題があった彼がある日、父親に話をした時の事です。

 

「話を聞いてくれって頼んだのに、お父さんはアドバイスをし始めた。

アドバイスをしてくれって頼んだんじゃないんだ。

ただ聞いてって言ったのに。

『そんな風に感じる必要はない』って、お父さんはアドバイスをしてくれたよね。

それは、僕の気持ちを無視したって事なんだ。

 

話を聴いて欲しいと言ったのに、お父さんが僕の問題を解決し始めた。

お父さんは、僕の事を過小評価して、僕から僕の自信を奪う事なんだってわかってないんだ。

聞いてって頼んでいる時に、

お父さんは、こうしたらどうかって話し始めたから。

僕はね、コントロールされているっても、感じたんだ。

失望して、不愉快にもなった。

話を聞いてくれって僕がいったからって、

僕に解決方法が全くなかったわけじゃないんだ。

話を聞く代わりに、お父さんは、アドバイスした。

僕が自分で解決策を見つける事ができるようなことだったのに。僕だって自分で考えていたんだよ。

僕は自分の価値が下がったように感じた。

 

でもね、お父さん、

僕の話をきいて、僕の気持ちを受け入れてくれるとね、

エネルギーを使って、お父さんに自分を分かってもらおうとすることもしなくていいし、

自己弁護なんかもしなくていい。

その代わり、僕はどうしてこういう風に感じてるのかなあとか、

どうやったらこの問題を自分で解決できるのかなあという事にね、

エネルギーを使う事ができるんだよ。

でね、そういう時は、お父さん、アドバイスはいらないんだ。

アドバイスの代わりにね、僕を信じて、励まして、サポートしてくれるだけでいいんだよ。

お父さんから見たら、僕が持っている感情は、理屈に通らない感情かもしれない、

でもね、時間をかけて、聴いて欲しんだ。そうしたら、きっと僕の気持ちが、わかってもらえるから、お父さんにも。」

source: A little Book of Listening Skills by Mark Brady,Ph.D. and Jennifer Austin Leigh

 

ついつい、アドバイスをしてしまう私達。

この少年のお父さんのように、良かれと思ってアドバイスをしてしまいます。

子供たちにだったり、友人にだったり、同僚や部下にだったり。

自分の体験や社会経験から、他の人を観察して、アドバイスをする人はたくさんいます。

でもそれが本当に相手のためになっているかどうかは、この少年の必死の声に現れているように、

必ずしもそうでないかもしれないのです。

 

ここが、コーチングとアドバイジングの大きな違いの一つです。

コーチングでは、アナタが自分で解決する事が基本です。

もちろん、アドバスをしてくれるコーチもいます。

それはアナタが頼んだ時です。

たぶんそのコーチは、

「私だったら、こうするかもしれないけど、

今のアナタだったらどうするのが一番だと思っているのかな」

と聞き返してくれる事でしょう。

 

コーチはこの少年が言っているように、もうアナタの中に解決策がある事を知っています。

じっくり、自分の意見は控えて、聴く、と言う事で、

その解決策は、春の日の新しい芽のように、土の中からむくむくと出てくるんですから。

 

ご意見や体験などがありましたら、是非コメント欄にお寄せ下さい。

 

 

 

#9 質問を変えてみる

あるクライアントさんが、ため息をつきながら、こんな風に話してくれました。

「私ってどうしてこうなんでしょう」

このクライアントさんは、今まで4回の減量プランに挑戦して、

4回とも途中で挫折。

やる気持ち、痩せたい気持ちは十分あるし、

今度こそと思って、覚悟を決め、予定表を組んでやる、でも、

続かない。

1か月続いたこともあるし、一度は3か月近くできたこともありました。

「いつも、ダメなんです。続かないんです。」

「家族や親せきの事や仕事のことなんかは、やらなくちゃいけないから、

なんとかやるんですけど、自分の事となると意志が弱いっていうのか」

「私って、どうして、こうなんでしょう」とため息。

 

この質問―どうしてこうなんでしょう? 

どうして・WHYの質問ですよね。

これは実は、怖~い質問です。

 

なぜかというと、答は

――だって、私は意志がもともと弱いから

――私は、能力(お金、時間、学歴、環境、経験)がないから。

または、

――今は、これができていないから、

――あれがまだだから、

――性格が、もともとこうだから、

――親譲りだから、

 

と言う風に、行き止まりアンサー、

つまり袋小路に行きついてしまう

行き止まりの質問だからです。

 

もし、こんな風な質問を自分にしているのに気が付いたら、

「あ、行き止まりの質問だ!」と自分でキャッチしてください。

 

そして、「どうして~なんだろう?」の質問を

「どうやったら、~になるんだろう?」と変えてみてください。

 

どうやったらは、HOWの質問です。

アイデアを自分に聞いてみる質問です。

 

例えば、

「どうして、直ぐ甘いものを食べちゃうんだろう」

は、

「どうやったら、直ぐ甘いものを食べないようにできるだろう?」

です。

 

「どうやったら、あまりものを食べないようにできるだろう?」

例えば、こんな答えが出てくるかもしれません。

「お買い物にいっても、甘いお菓子やケーキを買うのを減らそう(やめよう)」

「家の中に甘いものを置いておかないようにしよう」

「食べてもいいけど、いつもより半分に減らそう」

「甘いものが欲しい時は、3回に2回はお茶を飲もう」

 

HOWの質問、どうやったら・どうしたらの質問は、

アナタの行動を助けます。

出来る事、今から動けることを

自分で決める事ができるのです。

 

何かやりたいと思っている時、思っているだけでは、

「思考」で止まったままですね。

思う事は素敵です。

 

思ったら、次にしたいのは「どうやったら」という質問です。

アナタの中にたくさんアイデアがあるはずです。

 

ちょっと隠れて、アナタに発見してもらうのを

待っています。

自分に聞いてみるだけでそのアイデアが出てきます。

どうやったら、それができるだろう?

 

どうやったら?

 

#8 輝く点:言葉のご褒美

良い点を言い合おう

 

最近、あるワークショップに参加した所、宿題がでました。

「友達や家族や同僚などに自分のいいところ、

強み、輝いて見える点を、3つ指摘してもらいなさい」

という宿題です。

それも20人の人に聞きなさい、というんですね。

「ねえ、私のいいところって何?」って聞くのって、照れくさい。

でも、考えてみると、誰かが「こういう所がいいですね」と褒めてくれると、

素直に、うれしいし、励みになります。

感じている事でも、言葉にしてもらうって大切かも。

 

思いついた23人の人にメールを出し、

ご協力をお願いします、と頼みました。

 

そうしましたら、ありがたい事に14人の知人が

即、お返事をくださいました。

いろいろ、励みになるお言葉をいただけたわけです。

 

これは、コーチングにも使えるスキルだなあと思いました。

自分が分かっているつもりでも、わかっていなかったこともありました。

自分でも思っていたことが、

他人によって確認されたというのもありました。

 

その励みになる輝く点を自分なりに表にまとめて、

机の前に貼ってあります。

言葉にだして、良いものは良いと言ってもらう事、

すごくパワーがあります。

 

この練習は、続きがあります。

私もお返しをしたいと思い、お返事を下さった方々に、

それぞれの3つの良い点を考えて、

メールのお返事をしました。

 

その輝く点を眺めて、

私はこういう良い点を持っている人達に、かこまれているんだなあと

自分をさらに振り返る材料になったというわけです。

 

ちょっとご褒美を与えてもらったという経験。

また、その人達にお褒美のお返しをできたかなという経験でした。

 

日々、山あり谷ありで、良い事ばかりではないのが私達の生活です。

そんなことを、皆さんも、良い点を言い合って、

言葉のご褒美をされてみてはいかがでしょう。


 

 

#1 二人の旅人

ある男が、谷の村から、山の上の村に向かって、

旅をしておりました。

 

途中で畑仕事をしている山の僧がおりましたので、

旅人は声をかけました。

「やああ、お坊様、精がでますなあ。

昨日は谷の村に泊まったが、

今晩はあの山の向こうの、あっちの村まで行こうと思っています。

あっちの村はどんな村ですかね?」

「昨日泊まった谷の村は、どんな村だったかね?」

汗をふきながら、お坊様は畑仕事から手を休めて男に聞きました。

 

「いやあ、ひどい場所でしたよ。

人は不親切で、食べ物もほとんどまともなものを分けてくれない。

貸してくれた寝場所も、犬や馬と一緒の土間。

言葉もほとんど何を言っているのかわからなかった」

すると、お坊様はこう答えました。

「山の向こうのあの村も、たぶん同じような村だなあ」

 

数日たって、また別の男が山の峠を通りかかりました。

最初の旅人と同じように、野良仕事をしている山の僧に気がついて

同じように声をかけました。

「やああ、お坊様、ちょっとおききしますがね、

昨日は谷の村に泊まったが、今晩はあの山の向こうの村まで行こうと思っています。

あっちの村はどんな村ですかね?」

「谷の村はどうだったかね?」

汗をふきながら、お坊様は手を休めて、

二人目の旅人にも同じように聞きました。

 

「いやあ、言葉があまりよく通じなかったのですがね、

暖かい汁物をこさえてくれて、外でもどこでも構わないからという私に

馬牛のいる土間でよければと、家の中に招待してくれましたよ。

貧しい村に見えましたが、

心の優しい人が暮らしている村に思えましたね。」

お坊様は、ちょっと微笑んでこう答えました。

「山の向こうのあっちの村も、たぶん同じような村だなあ」

 

人生における体験は、実は10%が「事実」で、

後の90%は「解釈」なのだそうです。

 

同じ事が起こっても

「大変だ、嫌だ、思った通りに行かない」と

解釈もできますし、

「ありがたいことだ、何かこれで学べる事があるかな」と

解釈する事も出来ます。

 

二人の旅人のお話は、

この90%の部分が私達がコントロールできる部分だ、

と教えてくれているように思います。

 

コーチングでも、この90%に集中します。

回りの人も、出来事も、

私達が「こうだ」と思う事で、

ずいぶん違ってくるからなんです。

旅人たちが教えてくれるように、

アナタがどこに行っても、

アナタの解釈が

アナタの人生を

アナタの世界を

作ります。

 

どうせなら、周りに「心優しい人がいる素敵な村」を作ってしまいましょう。

 

ご意見をお寄せください。コメントはこの下の欄から。

 

 

 

 

#2 天国と地獄の長いスプーン

世界の各地に伝わるお話です。

地獄では、亡者たちは片腕を椅子に縛られ、一本の手にスプーンをまきつけられています。必死でスプーンを口に運ぼうとする亡者たち。 

テーブルの上においしそうなスープや食べ物、周りの亡者たちも同じように片手で、必死です。

そのスプーンはとっても長~くて、食べ物を自分の口に運ぼうとしてもうまく届きません。せっかくおいしそうな食べ物があっても、この長いスプーンのおかげで食べる事ができず、人々は痩せこけて飢餓の苦しみを味わっているのです。

一方、天国も状態は同じです。天国の住人も長いスプーンを片手に食事をしているのですが、彼らは満ち足りて、幸せにやっています。

天国と地獄とどこか違うかと言うと、長いスプーンで自分で食べようとするのではないのです。

長いスプーンを使って、他の人の口に食べ物を入れてやっているからなのです。

誰かが、お返しに食べ物を口に入れてくれているのです。

長いスプーンの寓話は、実は世界中に散らばっているそうです。イスラム教でもユダヤ教でもヒンズー教でも語られている話。東洋だと中国故事だったり、仏教説話だったり。出典がはっきり分からない所がまた面白いと思います。

場所が日本だと、長いスプーンが長いお箸になっていたり、食べものがスープじゃなくて、茶碗に入っているご飯だったり。

アメリカだと、アメリカ独立の立役者、ベンフランクリンが言った話と信じている人もいるそうです。

 

この話は、自分の事だけじゃなくて、他人のことも考える、そうしたら、自分だって幸せになるよという教えですね。

コーチングでもよくお聞きするのは、これこれこういう難しい状況がある、だから、自分がしたいこれができない、という状況です。

つまり、スプーンが長い、口に食べ物が入ってこない、これです。

そういう時は苦しいから、必死です。ある意味食べ物が口に入らない「飢餓感」に近いものを感じます。

 

コーチングでは、スプーンが長い、じゃあどうしようと発想の転換をしてみます。

あ、あそこにひもじそうな人がいる、さあ、お先にどうぞ、という具合に。

相手に、何かをしてあげる、させていただくことで、

ひいては自分の所にも届く、いただくことができるんですね。

 

私はライフーチで、お坊さんでも神父さんでもないのですが、宗教に関係なく、人間同士ってそんな風にまわっているんじゃないのかしらんと時々思います。

だからこの単純なお話が、世界中に知れ渡っているんでは、なんて思うのです。

長いスプーンが問題と感じたら、その長いスプーンを使って、どうやったら他の人に何かしてあげられるかな、と発想の転換をしてみる。

もし、今日アナタが、何か一つでもきついなあと思う事があったら、

関係ない事でも、誰かのために何かをしてあげる、させていただくことを、試してはいかがでしょう。

相手にスプーンを向けてみたら、自分へのご褒美が思わぬ所からやってくるかも。

 

 

#3 子供のアナタ、老人のアナタ

「8歳のアナタが一人でシクシク泣いています。

どんな声をかけますか?」

 

「17歳、アナタの、初めての失恋。

どんなアドバイスしてあげましょう?」

 

「24歳、出産前の不安な時。一言言ってあげてください」

 

コーチングの勉強をしている時、こんな質問の手法を習いました。

人生の節目、節目。、先が見えない、何が起こるかわからない、

不安な気持ちがいっぱいでした。

 

その時、アナタは何をしましたか。

どんな言葉や、励ましが助けになりましたか。

先生や友達やご両親や、作家かTVキャスターか、

誰かが言った適切な言葉、

心に響いた経験がありませんか。

 

今のあなた、大人の智恵で、

その時の自分に、どんなアドバイスができるでしょう。

そんな、質問をするのです。

 

実際にコーチングでお聞きすると、クライアントさんは、

少し考えてから、こんな風に言います。

 

「『心配しなくていいよ』って言ってあげる」

「『今はつらいけど、もう少し我慢すれば、もっとよくなるよ』、でしょうか」

「『自分を信じて行けば大丈夫』って言うね」

 

あの時、こういう風に言ってくれる人がいたらなあ、

という感想を述べるクライアントさんもいます。

不思議ですけれど、中には、本当に心の中に声が聞こえた気がして、

「大丈夫」と思ったと、思い出す人もいます。

 

辛い時、物事がうまく行かない時、目標になかなか到達できない時、

渦の中にいて、出口が見えないと思ってしまいがちです。

 

でも、何とか解決し、克服し、次に進んできたアナタ。

その時アナタは、自分なりの智恵を働かせる事が、できたんですよね。

だから、今のアナタがあるのです。

 

30歳の経験と知識があるアナタが、

15歳の悩めるアナタに話かける事ができたら、

どんなに力強い味方になることでしょう。

「見ててごらん、心配ないよ。

今の大変さは、何年後かの肥やしになるからね」

と。

 

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この質問のやり方には、実は、続きがあります。

 

それは、「未来のアナタ」にご登場いただくという質問の方法です。

 

「100歳のアナタ。豊かな人生を過ごしたアナタです。」

(年齢は、100歳でも150歳でも、ご自分で決めてください)

 

未来のアナタが、今のアナタに話しかける事ができたとしたら、

どんな風に言ってくれるでしょうか?

どんな智恵を授けてくれるでしょうか。

 

アナタをこの世界で誰よりも一番、よーく知っている、未来のアナタです。

お爺さんやお婆さんになっても、アナタに本当に幸せでいて欲しいと

願っているアナタです。

 

そして、その100歳のアナタに、今のアナタは何と答えますか。

 

子供のアナタ、老人のアナタ、あなた自身と、今日はちょっと会話をしてみませんか。

 

#4 聴く智恵、聴いてもらう智恵

コーチングで、最も大切なスキルの一つが「聴く」という事、そして本当に大切な事を聴いてもらう事です。

「聴く」という事が大切なのは、もちろんコーチングに限りません。相手のあるお仕事なら、また、相手のある関係なら、その全てに「聴く」技術が大切な事はいうまでもありません。

お医者さん、弁護士、先生、営業マン、ありとあらゆるカスタマーサービスで、また、お父さん、お母さんが子供の話を聴く、友人や同僚の話を聴く、--聴く機会、聴いてもらう機会はどこにでもあります。

聴くことができる人は、人から信頼される度合いも高いのです。

 

「聴いてもらう」という事も実はスキルです。

人は誰かに話を聴いてもらう事で、信じられないくらい元気が出るというのは、私達の多くが経験したことがあることですね。

 

こんな話を聴いたことがあります。

ニュージーランドのマオリ族の小さな部族を、西洋人のヒーラー達が訪ねた時の事です。

マオリ族の戦士も聴く智恵、聴いてもらう智恵を持っています。

マオリ族の戦士も聴く智恵、聴いてもらう智恵を持っています。

その部族は数百人で構成されている自給自足の小さな島の部族でした。

そこでは西洋でいう薬というものをほとんど使わないというのです。

「じゃあ、病気を一体どうやって直すんですか」先進国から来た一人が訪ねました。

「誰かが病気になったら...

と、その部族のメディスンマンは言いました。

「老若男女、子供たちも全て村の真ん中に集めるんですよ」

集まった部族の人々は病人を真ん中にぐるりととりまき、メディスンマンが一つ質問をします。

「あんたが本当に言いたいのに、言えないでいる事、まだ言っていない事って、一体何なんだね?」

そして、その病人が本当に言いたい事を言い終えるまで、じっと何時間でも、時には何日も待つのだそうです。

大切なことは何かを、聴いてもらう、答を辛抱強く待ってもらう事でもあります。

 

その環境が揃うと、私達は自分の中に本来持っている「智恵」にエネルギーを向ける事ができます。聴き手たち、部族の皆と繋がる、インターコネクテッドネスを通じで、私達の中にある智恵が、聴き手の持っている智恵と、呼応する。そして、重複し拡大した智恵には、心や精神だけでなく、体の病気まで直してしまう力がある、とこの部族の人達は教えたんだそうです。

 

この話を聴いたとき、そんなことって本当にあるのかなとも思いました。でも、私達も聞いてもらう事で、すっと心が軽くなったり、思わぬ解決口が見えたり、混乱していた事に整理がついたりしますね。

 

コーチングだけでなく、ビジネスにもティーチングにもparentingにも、応用できるリスニングの技術。

 

この話は、聴くこと、聴いてもらう事の、とってもすごいパワーを伝えていると思います。

 

#5 脱皮の話

 

クモやセミなどの昆虫、脊椎動物では蛇の脱皮が有名ですね。

蛇の脱皮の後の殻を蛻(もぬけ)と呼ぶそうですが、「蛻(もぬけ)の殻」なんて言葉になっています。

セミの殻は「空蝉(うつせみ)」といいます。古典の源氏物語にも登場する名前ですね。

今日お話するのは、甲殻類のカニの脱皮の話です。

カニによっていろいろあるようですが、赤ちゃんカニの中には、一年に5回も6回も脱皮するモノもあります。タラバガニは、一生で20回も脱皮すると言われています。

カニの年齢はこの何回脱皮したかで図るのだそうです。

小さい時は何度も脱皮しますが、大人のカニになると一年に一回とかに減ってきます。メス蟹は産卵をすると脱皮がおしまいになるという事ですが、オスは脱皮が続きます。

カニは一生のうちで、何度も何度も、脱皮をしながらカラダを大きくしていくんですね。その時には体中、ハサミの部分や目玉も足の先まで、全部くるりと脱いでしまうそうです。

 

この脱皮が始まる前に、モゾモゾと何かが始まります。

科学者によると、カニは脱皮の前に特別な酵素を出し、硬い甲羅を少し広げようとするそうです。

今までは居心地よかったその甲羅が、ある日きつく感じ始めます。そこでその酵素がでると甲羅がやや拡大、そこに海水が誘い込まれるようになります。

やがて、甲羅のどこかが割れて、中からまだ柔らかいホワホワの次の甲羅が出てきます。この時期、外敵などにやられると、ひとたまりもありません。

脱ぎ終わると、そのカニは締め付けるモノがないので、体がものすごーいスピードで成長するんだそうです。つまり、自分を、あえて弱く晒したその時に、グーンと成長するっていう事ですね。
 

そして脱いじゃったこの小さい殻の、一体どこに収まっていたんだろうという位、大きくなった新らしいカニさんが現れます。

 

私達人間も、人生で何度も、脱皮っていう事をしてるんじゃないのかなと思います。

 

コーチングのプロセスで、クライアントさんを見ていると、時々、脱皮のどのあたりにいるのかな、なんて思います。

 

「何かこれだけじゃないって思うんですよね」

「今まで順調にきたけど、何かまだ本当にやりたいことやっていない気がする」

これは殻の中のモゾモゾを察知している声なんでしょうか。

 

「思い切って仕事やめちゃって、アメリカにきたんですが、まだ英語も今一つだし、これからどうしようって思って」

まだ柔らかい殻の、グーンと成長の真っ最中。これからどうなるかが分からない、殻がホワホワですから、とっても辛いし、怖いし、シンドイ。

 

中には「今はこれで十分、別に何も変えようとは思わない」とおっしゃる方がいます。これは今は、ある面については、まだ脱皮の時期ではないし、今の殻のサイズで大丈夫ということですね。

 

この精神的な脱皮というものが、私達の成長には、実は本当に大切、いや、実はなくてはならないプロセスという事に気が付いて、

今自分は脱皮のどの段階にあるのかと、立ち止まって考える事ができたら、人生がわかりやすくなるかな、なんて思います。

 

参考:京都府海洋センター http://www.pref.kyoto.jp/kaiyo2/zuwai/dappi-seichou-top.html

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